柑橘と自然派果実酒のアナザーストーリー

フレッシュ柑橘だけでは流通面や保存性に欠ける課題を、加工により解決出来ないか！？　賞味期限による廃棄などのロスを防ぐ手立てはないのか！？　たくさん収穫された年には、何かカタチを変えて流通させることは出来ないか！？

そんな問いから生まれたヒントが、アルコールでした。

「添加物を一切使用せず、限りなくシンプルでありナチュラル」

妥協できないキーワードからおぼろげに脳裏をよぎったのがワインでした。

ただ、世界のどこを探しても柑橘だけで作ったものはありません。

そもそもワインは葡萄由来であり、柑橘を使用しないのですから。

そんな時に出会ったのが、自然派ワイン醸造で世界的に著名な大岡弘武氏でした。

20年以上前に単身フランスへ渡り、農民の産地と言うのに相応しいローヌ地方で自然と向き合い続けた人物。

自然派ワインと同じ製法で柑橘を醸造することが出来ないか！？世界的にも類を見ないチャレンジ。

ただ、大きなプレッシャーと好奇心の狭間で、彼は”未来”に懸けてくれました。

この自然派果実酒の将来性で市場が開拓されるだけでなく、「醸造家にとっても生きる道になる。ひいてはそれが、柑橘農家のためになる」と。

果樹栽培を取り巻く環境

福岡正信自然農園のメインの作物である柑橘。初代福岡正信の時代に1本の鍬（くわ）を片手に始まった畑は、今では約30種類の柑橘の光景が広がるまでになりました。ただ50年以上の歳月は、時代の景色を変えました。それは、少子高齢化・核家族・世界のトレンドなども含めて社会構造が変化したことで、食に対するアプローチが大きく変わり、多様化が進んだことです。結果、年末年始にこたつの上に置かれた蜜柑を、爪が黄色くなるまで食することも久しくなりました。

瀬戸内の燦燦と照り付ける日差しと穏やかな風が印象的な気候風土。そんなのどかなイメージが強い当園がある愛媛県でも、近年は大雪などの影響で甚大な被害が出ることがあります。自然の脅威の前では、人間の微力さを思い知ります。それは、全国の農業従事者にとっても同様。気候変動の前では、誰もがなす術に乏しいのが現状です。

私たちの自然派果実酒には、国境はない

ずっと以前から農園への訪問者で多い国の一つにフランスが挙げられます。農業大国であり、哲学を重んじる思考から共感の輪が広がっているのがその理由。2023年の春、私たちは、フランス・リヨンで多くの方々に自然派果実酒を試していただける機会に恵まれました。私たちのストーリー・考え方に真摯に耳を傾けながら、ゆっくりテイスティングする彼らの言葉の一つ一つにどれだけ勇気づけられたことでしょう。そして同時に、「信じることの大切さ」をあらためて感じた瞬間でもありました。

・新しい商品として、酸味と苦みのバランスが素晴らしい　－国家最優秀職人章　M.O.F

・年々、温暖化でワインの度数が上がっているので、低アルコールは嬉しい　－学生

・体感したことがない味で、ただただ素晴らしい　－南フランスの4星ホテルオーナー

・ソースやカクテルとしても魅力的だ　　－スイスのプライベートシェフ

・料理とのマリアージュが楽しみで、妻にも飲ませたかった　－ポールボキューズ料理学校講師

肩寄せ合い、同じ歩幅で

自然のいとなみ

私たちのリズム

物事を成就させることは、決して一人では出来ません。

そこには思いを分かち合う仲間とともに悩み、考え、笑い合いながら明日を創っていきます。

農園の柑橘を生業とする私たちのリズムに伴走してくれる大岡氏。

そして、温かく手を差し伸べる仲間たち。

”時代の流行”を意に介さない私たちの旅路の果てに続く大きな”自然”という存在。

「Think globally, act locally　（地球規模で考え、足元から行動せよ）」という言葉があります。

私たちもまた、”地球や自然”を考えながらいつも地域を大切にしています。

目の前の扉に手をかけながら、”いま出来ること”を心で解りたい。

そんなささやかな思いから誕生した自然派果実酒を、どうぞお試しください。

＜料理とのマリアージュ＞

柑橘特有の酸味と苦味が特徴で濃い目のソースを使った肉料理とも相性が良い逸品です。そのほかスパークリングワインやジン、日本酒などと割ってカクテルにするとまた違った印象をお愉しみいただけます。シーンや気分に合わせて味わい方を変えられるのも、柑橘を使った果実酒だからこそ。おもてなしのお料理、おつまみに添えて、大人の時間をお過ごしください。

甘夏ナチュレル 2022.6

甘夏の果汁が多く瑞々しい出来栄えとなった年です。特有の苦みも感じられ、どなたにも飲みやすい味わいとなっております。

甘夏ナチュレル 樽 2022.6

木樽でゆっくりと熟成させています。木樽仕込みならではの、飲んだ後も香りの余韻が長く愉しめます。

美生柑ナチュレル 2023.2

和製グレープフルーツとも呼ばれる美生柑を丸ごと搾り醸造した珍しい果実酒です。鼻から抜ける香り高さが特徴です。

甘夏ナチュレル 2023.5

寒波の影響を受け、自然を力強く生きた果実、果皮のニュアンスが鮮烈に表現された仕上がりとなっています。柑橘特有の苦みと酸味を感じる大人の味わいです。

「自然派ワイン」とは？

「自然派ワイン」に明確な定義は存在しませんが、一般的には次のような基準があげられます。

・有機農法や自然農法で栽培された果実を原料とする

・亜硫酸を使用しない、もしくは微量の使用

・天然酵母により発酵

・濾過しない

「無添加ワイン」とは、加熱滅菌しフィルターで澱や酒石を取り除いたものです。自然な環境下で栽培された原料を使用し、人為的・化学的な工程を醸造に極力反映させない自然派ワインは、「可能な限り自然に寄り添い、自然の力を存分に引き出したワイン」といっても過言ではありません。

自然派・甘夏の果実酒を美味しく召し上がっていただくために

・温度変化に気を付けて

酸化防止剤無添加のため、14度以下で保存しましょう。

・少し時間をおいてから愉しむ

輸送中に揺られ、瓶の中は不安定な状態。できれば到着後は2、3日程度立てた状態で冷蔵保存してください。

・グラスに注ぐ際はゆっくりと

フィルター濾過をしていないため、澱が沈殿する場合があります。ボトルの傾きに気を付けてグラスにゆっくりと注ぎましょう。フランスではシャーベットにも使用される澱。それをたくさん入れた状態で醸造しています。澱が下部に沈殿している状態でまずは試飲。そのあとゆっくり拡散してから再度お楽しみください。

大岡 弘武　プロフィール

■1974年　東京生まれ

■1997年　明治大学理工学部卒業、同年ボルドー大学醸造学 DNO（醸造士コース）入学
■1999年　同大学を中退、ボルドーBTSA（醸造栽培上級 技術者養成校）に入学、2001年同資格取得
■1999年〜2002年　ギガル社でエルミタ ージュ地区栽培長
■2002年〜2006年　ドメーヌ・ティエリー・アルマンの栽培長を務める
■2002年　ラ・グランド・コリーヌ社を設立、フランスにおける日本人の個人ワイナリーのパイオニアとなる
■2013年　『ニューヨーク・タイムズ』（世界版）に取材を受け、世界の一流レストランでワインが採用される
■2016年　帰国。ラ・ グランド・コリーヌ・ジャポン社を立ち上げ、岡山県で葡萄栽培とワイン醸造を開始
■2021年　一般社団法人おかやま葡萄酒園 を設立
■現　在　日仏でワインづくりのコンサルティングを行う

■訳 書「実りの言葉」（ラ・グランド・コリーヌ・ジャポン、2017年）
■著 書「大岡弘武のワインづくり　自然派ワインと風土と農業と」（エックスナレッジ、2021年9月）