なぜ、グレープフルーツ？

初代園主である福岡正信の時代から雅人、大樹へと継承されている甘夏があります。

栽培している柑橘の中でもその割合が大きい甘夏は、自然の循環に非常に適した品種と考えています。ただ、柑橘によっても収穫時期や管理方法などが少しずつ異なります。また、甘夏だけに偏らない農園運営を模索した時、百姓魂をくすぐる品種として大樹が着目したのがグレープフルーツでした。大実に秘めた瑞々しさ・果汁や果肉の特徴・食味方法などに将来性を垣間見ました。

酸味が控えめで甘い品種のグレープフルーツ

当園では、数種類のグレープフルーツを育てています。『三種のグレープフルーツマーマレード』の原材料として使用しているスイートグレープフルーツは、グレープフルーツと文旦をかけ合わせたグリーングレープフルーツ（オロブロンコ）の味に似ています。また、酸味が控えめでオロブロンコよりも甘みが増しているのが特徴です。

日本で流通しているグレープフルーツの多くが海外産！

普段スーパーに陳列されている果物は、遠く海外から輸入されるものもあります。何気ない風景のため、気づかないことが多いですが、その中にはオレンジ・グレープフルーツ・レモンなどの柑橘も含まれます。凍てつく寒さが印象的な日本の冬よりも、温暖で乾燥した海外の方が柑橘栽培に向いているからです。特に、世界の流通網が発達している昨今、適地適作で栽培された農産物が国境を越えて消費国へ輸出されるスムーズな流れが確立されています。

遠路はるばるは、いつも”リスク”と隣合わせ

ただ輸送技術の向上や輸送インフラが整備されても、生鮮品のより良い状態を維持しながら遠方へ運ぶことは困難を極めます。そのため、あらかじめカビや痛みのリスクを排除するため、防カビ剤を出荷国で使用することがあります。これらの防カビ剤は食品添加物として指定されているため、日本の規制に抵触することはありません。また、1日に摂取する量として健康被害が出るリスクも当然ありません。ただ、私たちのマーマレードのように外皮を使用する場合は特に神経を尖らせてしまいます。もちろん、日本国内で栽培されたものすべてが安全かというと疑問が残る側面もあります。一番大事なのは、口にするものだから作り手と消費者の間で信頼を築くための”情報提供”がとても大切だと感じています。

ストレートと濃縮還元の違い、ご存知ですか？

100％ジュースは、濃縮還元とストレートの2種類に大別されます。
濃縮還元とは、搾った果汁に熱を加えて水分を飛ばし、4〜6倍程度まで濃縮して冷凍保存、製品化の時に水を加えて元の濃度に戻すという方法です。保管や運搬面の利点がある反面、どうしても香りが飛んでしまうため、香料や糖分を加えることが多いです。他方、ストレート果汁はその名の通り、果実を搾った果汁をそのまま瓶に詰めたものです。当園のこのジュースは、インライン方式と言われる果肉だけを実から抜き取り絞りました。そのため、外皮の苦みなどがなく、果肉の甘みと酸味が伝わる100％ストレートジュースとなっています。

愉しみ方、いろいろ

私たちのジュースは自然な香りや酸味が特徴です。そのため、酸を強く感じる方は水や炭酸で割ってお試しください。柑橘の瑞々しさを残しながら爽やかな清涼感を感じます。また、アルコールなどと一緒にカクテルとして使用される方も多くおすすめです。

汗ばむ季節はジュースを製氷皿に入れて凍らせるのも良いかもしれません。通常の氷の代わりに使用すれば、グラスに注いだジュースも、より一層お楽しみいただけます。またグレープフルーツ氷を砕くとシャーベットになり、手軽な夏のひんやりデザートに早変わり。ドレッシングなどお料理との相性が良いのも柑橘ならではです！

余談ですが、柑橘栽培には”表年と裏年”というものがあります。それは、年により実の収量が大きく異なることを意味しています。一般的に収量が多い年は樹々が実をつけるために、たくさんのエネルギーを使うので翌年の収量は減る傾向になります。また、その逆も起こります。もちろん、すべてがこれに当てはまる訳ではないのですが、樹々も生きているため、その年や状態により実つきは残念ながら一定ではありません。そのため市販で流通しているストレートジュースの場合、販売ロスを防ぐため、たくさん絞った果汁を冷凍保管するケースが多いのが実情です。それにより私たちの生活にいつも柑橘ジュースがある生活が実現していると言えます。ただ私たちは1シーズンに1度だけ絞り、その1年以内にすべてを販売します。なぜなら、「今年の味は今年だけ、来年には来年を味を！」を大切にしたいという私たちのささやかな思いがあります。

限りなく自然に近い農業を目指している当園では、化学農薬・化学肥料を一切使用せずに作物に寄り添っています。近年の温暖化の影響で虫が北上しています。それにより、今まで発生しなかった病気が全国各地で被害をもたらしているケースがあります。化学農薬を散布すれば被害を抑制出来るのですが、私たちの農園はそうではありません。そのため、いかに樹々が自然との多様な調和を図れるかが大きなポイントになります。元気な樹々は病害虫に強く、無理・無駄が限りなく少ない自然な状態にするのが私たちが目指す農業です。

グレープフルーツと薬の飲み合わせにはご注意ください

グレープフルーツは、酸味が強く感じられることからもわかるように、ビタミンＣ（100g中36mg）の含有量が多く、クエン酸も共に含まれているため、吸収されやすく､かぜや美肌、がん予防に効果があると言われています。
いっぽうで、グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分には薬の血中濃度を上げる作用があるので､薬によっては効き過ぎや副作用が通常よりも強く現れてしまう場合があるそうなので、注意が必要です。

『出典：文部科学省「日本食品標準成分表2015年版（七訂）』
『出典：厚生労働省「日本人の食事摂取基準」（2015年版）』
『出典：くすりの適正使用協議会』