私たちの農園には、台所が2つあります。

1つは、お客様が来園された時に使用する用。

そしてもう1つは、ボランティアの方や研修生用。

後者は、小さな窓から陽が射しこみ、使いこまれたコンロやテーブルが昭和の雰囲気を醸し出すノスタルジックな空間。今となれば、時代の流れとともに目にすることが少なくなった光景も”古くて新鮮”という言葉がピッタリに！

そんな台所で、つま先まで冷え切った身体を労わりながら、農園で採れた野菜を水洗いし手際良く茹で、ささやかな”農園特製ディナー”を作ります。

そう言えば、コトコト、ぐつぐつ、フライパンの上の野菜たちは、柑橘畑がホームグラウンド！？柑橘の樹々に負けじと背伸びする野菜たちは、柑橘畑出身なんです。全国には、たくさんの柑橘農園がありますが、柑橘畑に野菜が植わっている農園は珍しいのではないでしょうか？

菜の花　大根　人参・・・

朝晩の激しい寒暖差に抱かれて生長した柑橘の傍らで、すくすくと生きる野菜たち。

時々、虫や鳥たちの奏でも相まって、柑橘畑はまるで多様性に満ちた”小さな宝箱”に。

私たちは、“有機的多様性”を大切にしています。

様々な種類の植物がその場に存在することで、互いが何層にも折り重なり、”無理や無駄がない調和”が生まれます。

森林の様子を想像してみてください。

張り詰めた静寂の空間には、いろんな樹々が視界を楽しませてくれるだけでなく、互いの生命の息吹が共鳴し合うことで、動植物が一体になる様子がうかがい知れます。

そしてふかふかの落ち葉は、長い年月をかけて幾層にも重なり合いながら虫や菌の住処になっています。調和がある空間では、大きな病気が蔓延することは少ないです。なぜなら、調和が生態系のバランスの”かじ取り役”だからです。

農園では毎年、意図的に蒔いた種やこぼれ種から芽を出した野菜が“自然調和の応援団”となり、柑橘畑を支えています。そして今回は、澄んだ青空に向かって、ちょっこり顔をのぞかせる大根をピクルスにしました。

柑橘の樹々の下、周り、いたるところに生長した大根。

自然調和を意識した畑との向き合いを大切にしている自然農法ですが、収穫を目的としていない大根は、個性派揃いです。大きいもの、小さいもの、形が不揃いで曲がっているものなど。スーパーの生鮮売り場の一角に並ぶ大根とは、当然一線を画します。

実は、私たちは3年以上前からこの大根を商品化出来ないかと思案していました。

季節柄、トウ立ちし易いために収穫期間が短い・限られた数量ぐらいしかない・メイン作物である柑橘のハイシーズンと重なることもその妨げの大きな理由でした。ただ、様々な角度から私たちの農園を知って欲しいという願いから少々時間は掛かりましたが、商品化に繋がりました。

数量に限りはございますが、今年の柑橘畑のいなみを収穫物を通じて、感じてください。

2024年春の1ページを皆さまへ。